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トレンツ・リャド


『CARMEN BATIDOR』(1991年) リャド作


人物の顔から服装、背景まで。一見、何から何までディテールに凝った描写が緻密な絵に見える。しかし、よく目をこらすと写実的なのは顔のみで他の部分は、絵具でひっかいたように実に荒々しい。そのタッチの荒々しさに、観る人々は驚き、思わず息を呑む。

この荒々しいタッチにこそ、リャド特有の光の空間表現が凝縮されているのだ。

紹介するのは、母国スペインで「ベラスケスの再来」とも言われた20世紀絵画に珍しい「印象派」の巨匠である。

印象派とは、視たモノをできるだけ詳細に絵に「再現」するのではなく、光や大気が織りなす一瞬の時間を描く者の感じるままに「表現」する画家の一派である。パリで活躍した初期印象派といえば、クロード・モネやルノワールがその一角である。

リャドは1946年、その印象派の描写手法が誕生して80年ほど後にスペインに生まれた。

↓ ↓ ↓ ↓

すでに時代のトレンドは印象派からは遠く離れ、ピカソのキュビズムやアンディ・ウォーホルのポップアートに移行する中、画家は初期印象派の描き方を究めていくことを決心した。

並々ならぬ才能により、劇的な肖像画を絶賛され「ベラスケス(スペインの宮廷画家)の再来」と呼ばれ。風景画を描けばモネにも似た画風により「光の収集家」と呼ばれた。


『カネットの夜明け(マヨルカ)』(1990年) リャド作

実際にモネに多大な影響を受けており、モネのアトリエ『ジヴェルニー』の風景を描いたり、モネの有名な『睡蓮』をテーマにして描いている。しかし、リャドの絵がかの巨匠の絵画と圧倒的に違うのは「光を表現することで空間を表す」技術の高さである。

たとえば、フラッシングという技法で絵具を飛び散らすことで、鋭い色彩の点と線の数々を光と影に見立てることができる。この絵具の鋭さこそ、空間のみずみずしさであり、活きた人物・風景の描写につながっていくのだ。


『旅人の道』(1991年) リャド作

リャドがあと100年はやく生まれていれば、とは言わない。日本で有名でないだけでスペイン国内ではもちろん世界的にもベラスケスやモネと並ぶほどの評価を受けている。

ならばと。日本でも魅了される人がもっと増えるべきだと、私は思う。

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