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『マンゴウ』(1996年) 小倉遊亀(おぐらゆき)作
「怠けていられない」
日本で最初の静物画を描いたと言われる偉大な女流画家は101歳の時、この絵を描いた。
夫を半世紀前に亡くし、養子として迎えた最愛の義息子を4年前に亡くし、失意の底に陥れられた画家は絵筆を置き、絵を描くことをやめた。
塞ぎこみ、ただ老いていく日常の中。それでも温かく取り囲む孫たちの懸命な働きかけによって小倉遊亀は101歳の画家としてこの世に再生した。
高齢のため、絵を描くのは一日2時間が限界。日に日に腐っていくマンゴーを何度も何度も取り変え、ようやく完成した静物画に彼女はサインの前に自分の年齢を描き込んだ。
「百一才 遊亀」・・・と。
この数字の重みは果てしない。
ドキュメンタリー映像の中で、小倉遊亀へインタビューアーが語りかける。
「先生は80年以上、絵をお描きになって。それでも現役でいらっしゃる」
100歳を超える画家は言葉に続いた。
「ええ、現役にもならないと思ってます」
「どうしてでしょう?」
「まだまだ・・・若造ですから」
しばらくの沈黙。最後にこうつぶやいた。
「いいお天気ね・・・」
2000年、このインタビューの3年後に画家は静かに目を閉じた。
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