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オスカー・ココシュカ


『風の花嫁』(1914年) オスカー・ココシュカ作




「どうか私の生涯の伴侶になって下さい」



若きココシュカは、年上の未亡人アルマ・マーラーへの手紙に熱烈なメッセージを送った。


しかし、彼の望みが叶うことはなかった。


出自の高いアルマには社会的地位があったからだ。


ココシュカとアルマは二人だけでイタリアへ旅行し、その間互いに愛し合った……そんな記録が残されている。


しかし、アルマにとっては一時の安らぎ程度のものでしかなかったのかもしれない。


おそらくはそれに気づいたココシュカの心の中には冷め冷めとした思いが募った事だろう。そんな最中に、この絵は描かれた。



女は満ち足りた様子でうっとり目を閉じている。しかし男の方はどうだろう。虚空をすえたまなざしを向け、表情はさめている。


小舟の上だろうか、海がうねり波頭を盛り上げている。嵐の夜のようだ。



暗い風と波にさらわれてしまったのはアルマの自分への思い、ココシュカは少なくともそう感じ取った。そうなると関係が破綻するのは早かった。

だが、人間関係とは裏腹に、激情と化した恋慕が壊れるのはとても難い。結局、彼の中で死ぬまでアルマへの思いが消えることはなかった。別の女性と結婚しても、真に愛していたのはアルマだけであった。



後年、結婚と離婚を何度か繰り返して余生を全うしたアルマの遺品から、ココシュカからの手紙があますことなく見つかった。大事に保管されていたという。


アルマは、本当にココシュカを愛していなかったのだろうか。「『風の花嫁』の彼女」は本当に彼女の真実の姿なのだろうか。



実際にココシュカが生涯の伴侶としたオルダ夫人は、ココシュカが亡くなった後に初めて『風の花嫁』を観た。もちろん、描かれているのが誰なのか、死ぬまで続いたココシュカの思い、諸処の事情を理解したうえである。


彼女はしばらく絵を観た後、ぽつりとつぶやいた。




「好きな絵ですわ」



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