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パブロ・ピカソ


『アヴィニョンの娘たち』(1907年) ピカソ作



「一枚の絵は破壊の集積である」


――ピカソはこう記した。


前回のセザンヌ『台所のテーブル』にて、一つの絵画の中に複数の視点から見たものを描く手法が後のキュビズムにつながるきっかけとなったことを書いた。

キュビズムの最初の作品と言われる『アヴィニヨンの娘たち』。描かれている女性一人ひとりにいろんな試みが成されているのはそれぞれの顔を見ていけばわかりやすいが、中でも右下の女性。



彼女は顔の左右で描かれる視点が全く違うのだ。観者から見て左側の顔は正面を向き、右側半分は横を向いているところを捉えている。


そして、何よりも。右下の女性はどうやら「こちら」に背中を見せているようなのだ。顔は観者に向き、身体部分は背中を向けている。首を180度曲げているようなもので、解剖学的にはそんなことは有り得ない。


顔は前向き。身体は後ろ向き。


「複数の視点で描く」とはまさにこのことで、ピカソは例の女性の顔を正面から描き、その後移動して女性の身体を後ろから描いたことがわかるのだ。(顔と身体、ピカソがどちらを先に描いたのかは素人の私には判別できないが)


ここまではいいが、それではピカソがこの描き方をすることで何が可能になったか。


↓ ↓ ↓ ↓



それは「物体の裏側を描く」ことである。



ピカソが、今までの絵画の歴史を真っ向から否定した瞬間である。ひとつの場所に立って絵を描こうとしてきたこれまでの伝統には、到底できないことをピカソはやってのけたのだ。


さらにこの時代から絵画は急速に内側を描くことへ加速していく。

ピカソらの後に続いて、一点からは見えない「物の裏側を描く」ことから表面からは見えない「人間の内面的な裏側を描く」ことに挑戦しはじめる潮流も生まれた。



この画家について、語られる偉業は実に多い。もちろんこれだけが彼の功績ではないが、ひとつの「イズム(思想)」を生み、今なおその流れが受け継がれていることを考えると、彼が美術史に遺したものはあまりに多い。

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